|
『照れ屋“青大将”はすばらしい人』 「婦人と暮し」1980.11月号 |
||||||||||||||||
オレってダメな人間なんすよ 若い女性は、この人のことをよくかわいいという。自分の父親ほどの年齢の男性を、かわいいとはなんだ、と言う気もするが、女性にとって、男のかわいさは年齢には関係ないのかもしれない。 男性であるわれわれは、まさかかわいいとは思わないが、それでも女性たちがそういう気持ちがわかるような気がする。そして、思うのだ。 田中邦衛って、本当にいい人なんだなあ、と思う。 なせそう思うのか。会ってみればすぐにわかることだが、ともかく彼は照れるのだ。四十八歳になって、これほど照れる人は珍しい。インタビューを申し込まれては照れ、向き合って座っては照れ、カメラを向けられては照れ、さらにはこちらからの質問の一つひとつに照れる。 「オレ、なにもカッコよくないし、いい話なんか、これっぽっちもないんですよ。オレなんかより、ほかにインタビューしたらいい人が、たくさんいるんじゃないすか」 何度もこういう。それも、口先だけではなく、本心からそう思っている口調でいう。この人は、本気でインタビューされることを恥ずかしがってるんだな、と思い、続いて、やっぱり田中邦衛っていい人なんだ、と思うのだ。 現代は、照れのない時代だ。なにも、タケノコ族の例をあげるまでもない。世の中、大人も子供も、出たがり、見られたがり、目立ちたがりの風潮。とくに芸能界にあっては、その自己顕示欲だけでスターの座を得た人も、決して少なくない。 こうした風潮の中にあって、田中邦衛の徹底的なまでの照れは、貴重でさえある。しかも、それが少しも嫌みに感じられないのは、彼がポーズではなく、本気で照れているからなのだろう。 「オレなんて、なんの取り柄もないんすよ」 と、彼がいえばいうほど、 「いいえ、いいえ、あなたは自分で思っているよりはるかにカッコいいし、魅力的ですよ」 といってあげたくなる。田中邦衛の人徳なのだろう。 過去に、二度、三度にわたって、田中邦衛に長いインタビューをし、そのたびに生いたちから現在にいたるまでの足どりをたずねたが、それはけっして楽な取材ではなかった。どこかのスターのように、横柄に構えているのでもなければ、そんなことも知らずに会いに来たのか、という顔をするわけでもないのだが。 「オレって、昔からダメだったんですよ。子供のころもダメだったし、大人になってもダメだし、今もダメなんす」 と照れて、自分からすすんで話すことはまずない。こちらからたずねたら、誇張も隠しだてもなく、すべてを正直に答えるのだが、時間がかかることはたいへんなものだ。そして、聞かれないことには答えないので、一度めより二度め、二度めよりは三度め、と、次々に新しいエピソードが登場する。だから、この人には、何回でもインタビューしたい。何回でも会いたい。仕事のためばかりでなく、この人と話していると本当に楽しい。 田中邦衛は、本当にいい人なのだ。 |
|||||||||||||||||
<<<メニュー画面へ |
不良にさえなれなかったんです |
||||||||||||||||
<<<TOP画面へ | |||||||||||||||||
生徒に教えられる先生でした |
|||||||||||||||||
生まれて初めて怒ったとき |
|||||||||||||||||
決死の覚悟のプロポーズで……。 |
|||||||||||||||||
・田中邦衛氏に関する情報、当サイトに対する要望などは掲示板もしくはこちらからお願いします。 |
|||||||||||||||||